九州大学病院 心臓血管外科

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当科手術の特色

弁膜症

心臓弁膜症手術

弁の構成

心臓は筋肉でできた血液ポンプです。図11は、血液の流れを示しています。「体」から戻って来た血液が心臓の4つの部屋(右房、右室、左房、左室)を順々に移動しますが、静脈血は「右房」→「右室」→「肺」へ送り出され、「肺」から戻ってきた動脈血は「左房」→「左室」→「大動脈」へ送り出されます。血液が効率よく送り出されるために各部屋の出口に「弁」が付いており、心拍のつど開閉します。すなわち血液が通過するときにはスムーズに大きく開き、弁が閉鎖したときには血液が逆流しないようにピッタリと閉鎖すること、これが弁に求められる機能です。図2では4つの部屋の各出口についている弁の開閉の様子を示しています。大動脈弁と、肺動脈弁は3つのパーツから構成される弁(半月弁と言います)でできており、僧帽弁と三尖弁は心室方向に伸びたヒモ状の組織(腱索)でパラシュートのように引っ張られる構造の弁(房室弁と言います)でできています。

弁の病気:弁膜症について

上記の4つの弁が正常に機能できなくなった状態を「弁膜症」と言います。主に、弁がうまく開かない「弁狭窄症」と、うまく閉鎖できずに逆流が起こる「弁閉鎖不全症」に分けられます。血液に流れが順調にいかないと心不全が起こったり、不整脈の原因となるため病状が重症であれば手術が行われます。以下に手術を行う頻度の高い弁膜症を示します。

図1. 心臓と血液循環

図2. 心臓の4つの弁

弁の病気:弁膜症について

上記の4つの弁が正常に機能できなくなった状態を「弁膜症」と言います。主に、弁がうまく開かない「弁狭窄症」と、うまく閉鎖できずに逆流が起こる「弁閉鎖不全症」に分けられます。血液に流れが順調にいかないと心不全が起こったり、不整脈の原因となるため病状が重症であれば手術が行われます。以下に手術を行う頻度の高い弁膜症を示します。

1大動脈弁狭窄症

左心室から大動脈へ駆出される際に通過する大動脈弁は強い血圧がかかり続ける状況で開閉を続けますので、動脈硬化の影響を受けて石のように硬くなります。図3のように、3つの弁膜にカルシウムが沈着してカチカチの状態になるとスムーズに開閉できなくなりますので、血液の通過障害が起こり心不全や失神、狭心症など多彩な症状を呈します。重症の場合には、人工弁(図4)による大動脈弁置換術が行われます。手術が困難なハイリスクの方には当院で行っている経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)が適応となる場合があります。詳しくは「TAVI」について、をご参照ください。

図3. 大動脈弁狭窄症

図4. 人工弁の種類

2大動脈弁閉鎖不全症
大動脈弁からの逆流のため、左室から大動脈へ駆出された血液の一部が再び左室へ戻りますのでそれを受け止めるために心拡大(心肥大)します。十分に血液循環ができないため心不全を発症します。人工弁による大動脈弁置換術が最もオーソドックスな治療ですが、最近、当科では、自分の弁の修復(大動脈弁形成術)を積極的に行うようにしています。異物を使用せずご自身の組織を利用して修復する方法です。難易度が高い手術ですが、自分の組織を使用するため安全である事や、抗凝固療法が不要であることなど多くのメリットがあります。
3僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁は左房と左室の間にある弁で、図2に示すように二枚の弁が左室側に伸びたヒモ状の組織(腱索)でパラシュートのように引っ張られた構造をしています。この病気の主な原因は、腱索が部分的に伸びてしまったり、切れたりすることで弁の一部が翻転して逆流を生じることですが、その他には心拡大に伴って弁輪が広がって二枚の弁がうまく接合できずに隙間ができて逆流を生じたりします(図5)。程度が軽ければほとんど症状はありませんが、重度になると逆流に伴う心不全が起こります。基本的には自然治癒は期待できませんので重症の場合には手術が進められます。主には、自分の弁を修復する僧帽弁形成術と、人工弁置換術ですが、当科では積極的には僧帽弁形成術(図6)を行っております。具体的には、翻転した弁を切り取ったり、腱索を新たに追加したり(人工腱索による再建)、弁輪の大きさを整えたり(人工弁輪による縫縮)しますが、いくつかのテクニックを組み合わせて弁形成を行います。心機能が維持されるなどのメリットが多いため現在の治療の第一選択としていますが、どうしても形成ができない場合には人工弁置換術が必要です(図4参照)。

図5. 僧帽弁逸脱による
閉鎖不全症

図6. 僧帽弁形成術

人工弁の選択;機械弁vs.生体弁

人工弁にはカーボン、チタンで作られた機械弁とウシやブタの心臓弁・心膜を加工して作られた生体弁があります。それぞれに長所短所が存在するために、人工弁置換術を受けられる患者さんは事前にどちらかを選択しておく必要があります。

1機械弁
材質が主にカーボンで出来ており非常に頑丈で耐久性に優れていますが、生体内では絶対的な異物です。人工弁に血液が触れると、表面に血栓(凝固した血液塊)が形成して付着します。この血栓が詰まって弁の開閉ができなった時には非常に危険です。また血栓が外れてしまうと多くの場合には血流に乗って脳梗塞の原因となり、突然の麻痺が生じたりします。したがって血栓形成を予防するために血液サラサラの薬:抗凝固剤と知られているワーファリンの内服が生涯必要となります。機械弁による人工弁置換術をした場合、厳格なワーファリンによる抗凝固療法が必要になりますので定期的に病院で採血によるチェックを行う必要があります。なお、ワーファリンによる抗凝固療法では、出血しやすくなりますので怪我や打撲(特に頭部打撲)、胃潰瘍などの内臓出血は非常に重篤となりやすいので注意が必要です。
2生体弁
ウシやブタの生体材料を加工していますので抗血栓性に優れるのが一番の特徴です。通常は、生体弁による人工弁置換術後の患者さんはワーファリンによる抗凝固療法は術後3ヶ月のみで中止できますので機械弁と比べると出血による合併症のリスクははるかに軽減できます。しかし、移植後に徐々に劣化が進みますので、耐久性の点では機械弁に大幅に劣るため大体10-15年で弁の取り替えが必要となります。

現在の日本のガイドラインでは、70歳以上であれば生体弁を選択しても良いと推奨されています。その他、ワーファリンの内服により問題となる方、例えば挙児希望の若年女性(ワーファリン内服により胎児に障害が出ることが知られています)、外傷や打撲を伴う職業の方(自衛官やボクシングなどのスポーツ選手)などは、生体弁での人工弁置換術を受けることも選択可能です。生活スタイルなどにあわせて人工弁の選択ができますので手術を受けられるまでに十分説明を受けて選択することが可能です。