九州大学病院 心臓血管外科

第4回九州・沖縄地区補助人工心臓研修コース

アドバイザーご挨拶

教授 澤 芳樹
大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科
教授 澤 芳樹
(補助人工心臓治療関連学会協議会 代表)

重症心不全治療における補助人工心臓治療の展望
~BTTからDTそしてBTRへ~

1970年代から開発が始まった補助人工心臓はもともとDestination therapy(DT)を目的としていた。しかしながら、1980年代半ばからはLeft Ventricular Assist System(LVAD)がBridge to transplantation(BTT)として盛んに臨床応用されるようになった。また、近年、補助中に自己心機能の回復を認めLVADから離脱例もみられており、Bridge to recovery(BTR)としての使用や、DTや移植適応に到達するためのBridge to candidacy(BTC) も欧米では盛んになってきている。

埋め込み型の第二世代ポンプの普及によって、いまや欧米並みの補助人工心臓治療が可能となり成績を見ると世界で最も優れた治療成績を上げるに至った我が国において、ドナ不足がまだまだ解決し得ない現状の中で、今後重症心不全治療のさらなる展開が予想される。

もとより、心臓移植の展開が今後も困難な我が国において、BTTのみならず移植を前提としない重症心不全の治療としてのDTや再生医療や再生医薬品との組み合わせによるBTRを目的とした新しいLVAD治療展開が期待される。

そのためには、認定医やコメデイカルの認証制度とともに、施設認定も実施施設のみならず管理施設の整備が不可欠な状況にある。紹介医のもとに患者さんが戻って、人工心臓管理を受けることができる体制整備がいままさに始まっており、補助人工心臓管理認定の資格制度が次年度よりいよいよ始まる。

このような背景のもとに、九州沖縄地区でおこなわれてきた九州・沖縄地区補助人工心臓研修コースも第4回を迎える。重症心不全治療は、もとよりチーム医療であり、各職種のメンバーが患者さんを中心にその最適化をいかにはかれるかが重要である。本研修コースのの果たす役割は益々大きくなり、その発展が期待される。