九州大学病院 心臓血管外科

先輩の声

九州大学病院心臓血管外科で活躍する、先輩達の声をご紹介します。
入局を決めた理由や魅力、やりがいなどを語っていただきました。

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未来の後輩たちへ
- 柔軟で多様性ある環境の
実現へ -

宮城 ちひろ

クリーブランドクリニック留学中 / 宮城 ちひろ
(2013年卒業)

miyagi chihiro

 前回この「先輩の声」の依頼を受けてから早くも3年が経過しました。色々と変化がありましたが、再度ここに登場する機会を頂きましたので、私の近況について少し書いてみようと思います。

 前回勤めていた熊本市民病院の後は、九州大学医学府の博士課程に進学し、大学院生として4年間、研究に従事することとなりました。当医局では入局後数年間レジデントとして臨床経験を積んだ後に、ほぼ全員が博士課程に進学し、アカデミックな視点を身につけるトレーニングを行います。博士課程1年目では、大学での臨床診療にも従事しつつ、研究テーマの選定や基礎トレーニングを行っていましたが、幸運にも2年目から、アメリカのオハイオ州にあるクリーブランドクリニックに留学させていただけることが決まりました。

 クリーブランドクリニックには、深町清孝先生という当医局の大先輩がいらっしゃいまして、20年以上にわたってアメリカで研究室を運営し人工心臓の開発研究を行っておられます。その深町ラボに研究留学させて頂き、リサーチフェローとして2年生の夏から現在(2022年春)に至るまで、人工心臓の開発研究に従事させてもらってます。大動物(ウシやヒツジ、ブタなど)に人工心肺を用いて人工心臓を埋め込む手術をするというのが業務の中心で、その準備、実験計画、論文報告までを担当フェローとして責任を持って行います。血液ポンプ開発のプロであるエンジニア達と直接話し合いながらデバイスを改良し、実験を進めていくのは、日本ではあまり経験することのない非常に刺激的な体験です。

 アメリカに来てからもうすぐ2年、英語は得意な方ではあったものの、帰国子女のようにペラペラとはまだいきません。特に最初数ヶ月はカンファの内容の半分もわかってなかったんじゃないかなと思います。それでも、研究室の皆さんがとても親切で楽しい方々ばかりで、ホームシックになる暇も無く充実した日々を送っています。日本との文化の違いはもちろん感じますが、とにかく多様なバックグラウンドを持つ人々(アメリカのみでなくヨーロッパやメキシコ、アジア諸国なども)と交流をする場面が多くあり、国籍も文化的背景もバラバラな中で自分自身のことも日本のことも改めて見つめ直す良い機会となりました。新しもの好きな私としては、多様性を受け入れ、毎日新しい発見があり、またポジティブな態度でお互いにフィードバックを欠かさないアメリカ文化をとても気に入っています。各国に友達ができるのも嬉しいですね。

 医療システムの合理性や研究への投資額の違いなど、日本に足りないものも色々と見えてきます。博士号を取ることができれば、その後はまた臨床に戻ることになると思いますが、ぜひアメリカでも臨床修行をしたいなと考えるようになりました。ライセンスを取ったり論文を可能な限りたくさん書いたり、そのためにやらなければいけないことはまだまだたくさんあり、こうして次から次から前向きな選択肢があることをありがたく思います。

 あと個人的に大きな出来事としては、2022年の2月にとある自己免疫性の内分泌疾患を患うことになりました。症状はなく偶然に見つかりましたが、治癒は期待できず、合併症のリスクもあります。健康がとりえだった私にとってはまさに晴天の霹靂でした。幸い両手は動くし目も見える、治療経過も良好です。しかし、不規則な生活や長時間の絶食が敵になるため、激務の心臓外科医が続けられるのか、という不安と日々戦っております。ただ、もしそんな私が心臓外科医を続けることができたなら、それはきっと後輩達にも良い環境を提供できる証明にもなるんじゃないかと思うので、まだまだ夢は諦めずに頑張ってみようと思っております。職場環境にも柔軟さと多様性が求められる時代ですし、働き方改革の過渡期において、私が役に立てるところも少なからずあるのではないかと思っています。

 臨床留学が一度日本に帰ってからになるかどうかや身体のこと等含めて、まだ先のことは確定しておりませんが、後輩の皆さんにも是非こうした留学経験等をシェアできれば良いなと思っておりますので、興味があればいつでも連絡してきてくださいね。

Twitterアカウント: @C_Miyagi_MD